2019年7月19日、ニューヨークのマンハッタンにて「働き方改革 次の一手」~今話題のティール組織にみる新しい時代のマネジメント~ セミナーを開催しました。その一部をレポートします。
基調講演「ティール組織にみる新しい時代のマネジメント」
サイボウズ米国法人社長(Kintone Corporation) 山田 理

これまで日本やアメリカで実践してきた人事制度や働き方改革の経験をベースに、ミレニアル世代の若者が活躍していくこれからのアメリカ社会において、どのように組織マネジメントを行ったらよさそうか、どのような組織だったらワクワクしながら働けそうかについて語りました。
企業理念、人事制度
まずは本日のセミナーのベースともなるサイボウズの企業理念、人事制度の紹介からスタートです。

企業理念
- チームワークあふれる「社会」を創る
- チームワークあふれる「会社」を創る
企業理念に掲げるほど「チームワーク」にこだわりを持っているのですが、チームワークあふれる「会社」を目指す上で「チームワーク」という言葉を下記の4つで定義し、社内の共通言語としています。また、どのような場面においても、この4つが活動の根幹にある必要があります。
「チームワーク」の定義
- 理想への共感
- 多様な個性の尊重
- 公明正大
- 自立と議論
続いて、企業理念をもとに定めた人事制度の方針についての紹介です。
人事制度の方針
- 「100人100通りの働き方」
これは、一人ひとりのライフスタイルやワークスタイルに合わせた働き方を自分で選択できる制度です。家で働きたい人もいれば時短や週3勤務で働きたい人もいます。残業をしたくない人もいます。近年では自分のスキルアップのために副業したい人も年齢層に関わらず増えており、働き方がますます多様化してきていると言えます。そんな一人ひとりの希望を受け入れるための制度です。
では、「100人100通りの働き方」を実践していくには何が重要か。それは、
- 「制度」・・・働く場所や時間の自由な選択、副業や再入社・子連れ出勤 OK など
- 「風土」・・・多様性の尊重、公明正大、仲間を信じる、オープンな情報公開 など
- 「ツール」・・Web会議システム、情報共有ツール、セキュリティ対策 など
の3つのフレームワークです。
このフレームワークに基づき具体的に内容を決めていくのですが、それぞれのフレームワークの中だけで独立して整備されてはダメで、大事なのはこの3つを相互に絡ませながらバランスよく整備していくことだと考えています。また、個性の多様化や世の中の変化に合わせて内容を随時アップデートし続けていくことも大事なポイントです。なお、アメリカでは、このフレームワークを軸に、アメリカに馴染むよう中身をローカライズして実践しています。
その結果、日本における離職率が最高で28%だった2005年と比べ、2018年には5%まで低下。一方で売上高は、チャレンジ中こそ横ばいだったものの、2018年には2005年の3倍以上も増加していることから、自分たちが実践してきた取り組みが結果に繋がるという一つの証明にもなっているのではないでしょうか。
これからの時代のマネジメント
さて、ここからは「ティール組織にみる新しい時代のマネジメント」について、本題に入ります。
「ティール組織」とは、経営・組織マネジメントの分野で近年注目されるようになってきた進化系の組織の形態です。企業や組織にみられるヒエラルキーやトップダウンによる指揮命令が無く、社員同士が信頼で結び付き、情報がオープンで、誰もが意思決定できる権限が与えられている生命体のような組織形態です。その「ティール組織」には、下記の3つの特徴があると言われています。
3つの特徴
- 存在目的(エボリューショナリーパーパス)・・・企業理念、進化する組織の目的
- 全体性(ホールネス)・・・個人の能力が最大限に発揮できる場、心理的安全性が担保されている場
- 自主経営(セルフマネジメント)・・・情報の透明化、権限移譲、プロセスの明確化
これら3つとこれまで自分たちが実践してきた取り組みにみられる共通点を、具体的なエピソードを交えながら紹介しました。

実践してきたことと共通点のまとめ
- 自分たちの理想(存在目的)をしっかりと掲げることで、それに共感する(理想への共感)メンバーが集まり、チームができる。
- そこにホールネス(全体性)の概念が浸透していくと、誰もが自分の能力を安心して最大限発揮できる(多様な個性の尊重)場へと変化していく。
- すると、それまで他人からの指示で動いてきたメンバーに主体性がうまれ、自立が進む。自立したメンバーが自分の意見や情報を共有し、素直にさらけだす(公明正大)ことで様々なアイデアや意見が生まれ、議論が活発になる(自立と議論)。
- そのようなプラットフォームができあがっていくと、次第にマネジメント層に「支配される組織」から、自立した一人ひとりが集まり自分の意見や情報を出し合う場所を運営する「自ら参加する組織」へと進化していく(自主経営)。
※実際に社内では、2019年入社の新入社員が自ら声をあげ、副社長のSNSのプロフィール写真を今風にするという企画が立ち上がったことも。彼ら自らプロデュースし、結果的に副社長のSNSのフォロワーが3倍になったなど、若手メンバーがイノベーションを起こしたエピソードが数多く存在しています。
まとめ
これまでの実体験に基づく見解と、ティール組織の概念に共通点が多くあることから、「制度」「風土」「ツール」をバランス良く整え、ティール組織のような組織を目指していくことが、これからの時代のマネジメントには必要になってくるのではないでしょうか。
毎年ミレニアル世代の若手メンバーが続々とジョインしてきます。実際に彼らは、組織や人に「支配される」のではなく「自ら参加する」ことを好む傾向にあるようです。インターネットが普及する前は、ヒエラルキーの上の方にいる一握りの人が情報を持ち、それ自体が権力になっていました。そして、情報を持っていない人は、上からおりてくる指示命令に従って行動するがほとんどでした。しかし、情報が世の中にあふれる今の時代において、ミレニアル世代の彼らの方が情報をたくさん持ち、必要な情報にたどりつく検索能力が高い場合もあります。情報は所有(個人戦)する時代から共有(チーム戦)する時代へ。そう変化していくことで、彼らがチームの中で安心して活躍できる場も広がると信じています。自分の意見や情報を安心して共有・さらけだすことができ、自らの意思で参加・意思決定できる組織こそが、ミレニアル世代の若者がワクワクして働ける組織の形なのではないでしょうか。(終)
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About the Author
Hiroko
2006年親会社のサイボウズ入社、営業、営業企画、バックオフィスを経て2017年1月よりKintone Corpの一員に。 Client Support Specialistとしてお客様サポートや営業アシスタントを務める。2児の母。 2人目が生まれてからは在宅勤務で育児と仕事の両立を目指す。